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意味を知るとグッと良くなる

【歌詞解釈】androp/Roots ”始まり”は悲しみのためか喜びのためか、その問いに答える

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例えば何を思ってきたか そいつが世界を作ってきた
だけれど元を辿ってみても 君は涙を作ってきた

駆けだす足を見つめる度 そいつが自分をつくってきた
だけれど傷ついた事全部
望んで出向いた訳じゃなくて
どうにかしてしまおうか そいつのその声は
どうすりゃ満足なのか ほら大層に叫ぶ

「全てを心に抱いてみせてよ 寂しい夢じゃいつもと同じ
全てを心に抱いて見せてよ 深呼吸して単純なもんだ」

例えば誰かの為にと思う 自分の中にはそいつがいる
だけれど誰かの為になんて 望まれるような自分じゃない

どうにかしてしまおうか そいつのその声に
誰が満足なのか 自問自答は廻る

「見せてよ 悲しい日々はこれでもう終わり
見せてよ 心に抱いてる全てを 深呼吸して
全てを 心に抱いてる全てを 君が望めば景色は変わる
全てを心に抱いて見せてよ 深呼吸して」


単純なもんだ

 


androp「Roots」(from 1st album "anew")

 

Rootsという曲

andropのデビューアルバム「anew」を飾った一曲はこのRootsという曲

 

まさにandropの技術の高さと、ボーカル内澤崇仁の独特な世界観を3分足らずで伝えきったandrop屈指の名曲。

 

「Roots」の意味は以下の通りになります。

物事の根元・起源。 

 

これを踏まえた上で、内澤崇仁さんの思いやこの曲の背景を考察していきたいと思います。

 

さらに最後の歌詞にすこし斬新で面白い表現が使われているので

そこにも注目したいと思います。

 

この曲の登場人物

この歌では「そいつ」「君」「自分」「誰か」
というキャラクターが出てきます、この言い回しがこの歌の独特なところ

ここの解釈で曲の解釈は全て変わる為、意見の分かれるところですが。

色々考えた結果。
「そいつ」=「ありとあらゆるルーツ」
「君」=「過去の自分」もしくは「愛する人?」
「自分」=「今の自分」
「誰か」=「他人」

と解釈した上で、考察します。

「物事」を作り出すときに生まれるものとは・・

例えば何を思ってきたか そいつが世界を作ってきた
だけれど元を辿ってみても 君は涙を作ってきた

 「例えば何を思ってきたか」思想という”ルーツ”について歌ってますね

 

そいつ=思想 という考えができます。


でも思想というルーツの元で「君」は涙を作ってきた。
つまり、世界は”思想”によって作られてきたけども、思想によって”君”の悲しみも作ってきた、という因果関係を歌ってます。

 

今回では「君」という登場人物を「過去の自分」と捉えています。

 

同アルバムの「Nam(a)e」という曲では、君という表現がもう1人の自分として扱われており
後に出る「echoy boy」という曲でも「過去の自分」という表現が用いられてるので、そういう解釈をしていますが
「君」が愛する人と解釈できる余地があることも、述べておきます。

 

 傷つく自分を無視できない

 

駆けだす足を見つめる度 そいつが自分をつくってきた
だけれど傷ついた事全部
望んで出向いた訳じゃなくて
どうにかしてしまおうか そいつのその声は
どうすりゃ満足なのか ほら大層に叫ぶ

 

「駆けだす足を見つめる度」
これも”ルーツ”です。

 

そいつ=駆け出してきた自分

自分はそのおかげ作られてきた
「だけれど傷ついた事全部 望んで出向いた訳じゃなくて」
おかげで今を生きているけれども、その中で必然的に傷つくことがたくさんあった。


「そいつのその声」とは、悲しんでいる自分の声ということでしょうか

つまり、悲しんでる自分の声も無視はできない、と解釈できます。


自分の未来を作ることは楽しいけれど、傷ついてしまうから、楽しいことと傷つくことのせめぎ合いになって「どうすりゃ満足なのか」わからない
どうにかしたい、そんな迷いに対してのメッセージが次のサビで綴られます。 

 

喜びも悲しみも全て抱きしめる

「全てを心に抱いてみせてよ 寂しい夢じゃいつもと同じ
全てを心に抱いて見せてよ 深呼吸して単純なもんだ」

 結局、ルーツの上では傷つくこと全てを拒絶することはできない
だから”傷ついたこと”も”未来を作り上げたこと”も全てを抱いて見せてよ、と歌っています


難しく考えてしまう自分がいるけれど、そもそも「苦しい」「楽しい」全てが”ルーツ”であり”生きてる意味”だとまとめてしまえば
これだけ単純なことはない、全てを抱くというのはそういうニュアンスがあると思うんです。


「単純なもんだ」という1フレーズだけで、力がふっと抜けるような歌い方がとても開放的です。

 

歌詞ではサビに「」が入っている

 anewのアルバムには歌詞カードがありませんが

公式ページにて公開している歌詞では、サビに「」が入っています。

 

”悩んでる自分に対してのメッセージ”という構図がそこには感じられます。

androp

 

 

自分と他人の関係

 

例えば誰かの為にと思う 自分の中にはそいつがいる
だけれど誰かの為になんて 望まれるような自分じゃない

 そして2番の歌詞では「誰か(他人)」という存在が登場します。

「誰かのために」と思える自分がいるが「誰かのために」の対象になり得ない自分がいたりもする。

つまり「与える」「与えられる」の関係性のなかで「与える」ばかりの自分に、世の中の不公平さ感じるべきかというジレンマを感じます。

 

どうにかしてしまおうか そいつのその声に
誰が満足なのか 自問自答は廻る

 

そしてまた、「どうにかしてしまおうか」と悩み始めます


「誰が満足なのか」という歌詞、”誰かの為に”と思うことは大切だけれど、自分はそんなこと思われていない
ならば「誰」が満足するための世界なのか、自問自答を繰り返していきます。

 

 

「見せてよ 悲しい日々はこれでもう終わり
見せてよ 心に抱いてる全てを 深呼吸して
全てを 心に抱いてる全てを 君が望めば景色は変わる
全てを心に抱いて見せてよ 深呼吸して」
単純なもんだ

 

そしてラストのサビへ 「見せてよ」と歌います、すべてのルーツを見せてよ、今の全てを見せてよ、という意味です


「悲しい日々はこれでもう終わり」と強い決心が感じられます。

 

そして「君が望めば景色は変わる」という歌詞の中で一つの結論を出します。

 


1番で歌われた「何かを思ってきた時、駆け出してきた時 傷ついて涙してきた」ということ
2番で歌われた「自分が望まれる存在ではなかった」ということ

 

 

悲しいことがあって複雑になるけれど誰かのことを考えると複雑になるけど

その複雑さを抱いたまま、”自分”が新しい景色を望むだけでいい

そのためには悲しいことを含めて全てを抱いて 深呼吸してみるだけでいい

 

「単純なもんだ」で歌は終わっていきます。

 

ラストサビのこだわり

以上で歌詞の考察、解説になりますが

この歌詞でひとつだけ、説明できてないことがあります。

 

この歌詞の最後は”単純なもんだ”で終わりますが

 

このフレーズが「」の中に含まれていません(1番では含まれています)

 

この違いに意味がないわけがありません。

つまり、「」の中は悩んでいた自分が未来を切り開くためのメッセージでありましたが。

メッセージではなく今の自分の気持ちという形で着地しました。

 

すごくこれ大事な部分だと思うんですね、音楽を聞いてるだけでは気づかない表現です。

 

MVとの関係性が素晴らしい

ミュージックビデオではストップモーションで歩いたりスケボーで進んだりするアニメーションが展開されています。

 

最初立ち止まってるところから”進む”ので、まずは「始まり」を表しています。

 

そしてもう一つ注目すべきは、ストップモーションのメイキングを写しているということ。

 

MV見てる側からも気の遠くなるような作業がどんどん早くなっていき、走っている足に当てはめられていきます。

 

この足にアニメーションを当てはめるというのは、”ルーツをたどる”という意味が込められていて、過去に歩いた足跡を、改めてなぞって描いている

 

ということだと思います。

 

アニメーション=自分のルーツを辿っていくことの比喩

 

そして最後のシーンでは、なぞっていたアニメーションの紙がくしゃくしゃになり消えて、もう一度立ち止まってまた歩き始めます。

その時に「単純なもんだ」というフレーズで終わる。

 

とても綺麗な終わり方ですね、こう解釈してMVを見てみると、「なるほど」となります

ならなかったらすいません。

 

また、こういった歌詞を解釈する中で、あなた自身の生き方を考えることができることも音楽から受けられる恩恵の一つだと思います。

 

今回の曲では「自分を作り上げたルーツには悲しみも喜びもある」

とした上で「それらを心に抱いて見せてよ」と歌っています。

 

あなた自身にどんなルーツがあり、あなたはその全てを受け入れられるのか

自分も改めて考えさせられました。

 

androp最高です。