【歌詞解釈】indigo la End/ハルの言う通り 皮肉で呆気ない失恋を描いた、春の失恋ソング
indigo la endというバンドを知ってますでしょうか。
知らないのにこの記事を開く人はいませんね、はいすいません。
私は川谷絵音さん音楽がとても好きで、その一つのバンドであるindigo la endでは「ハルの言う通り」という曲が、際立って好きなんです。
もうすでにいくつかの考察はされていますが、個人的に好きな曲であり、抽象的な部分が多く、要考察曲なので、自分なりの考察もしようと思いました。
季節と恋愛
冬の恋愛が春に変わり終わってしまった。
そういった捉え方から。
恋愛は四季のように移ろうものという呆気のなさと
その流れに抗おうとした”主人公の悲しみ”と”とある後悔”が全体図を飾っています。
とても、断片的な表現が多く、造語などもありますので、それらを整理しながら考察してみましょう!
それでは、順番に考察していきます!
歌詞考察
触れ合うたびに あなたは怒って
寂しい時は 妙に甘えながら 着飾る
ここには具体的な2人の関係性が描かれています。
「あなた」という人物の不安定さに対比して、寂しい時は甘えてくることにどこかホッとしていた「わたし」
そういった弱みに付け込んで着飾ろうとする「あなた」のズルさを歌っています。
何てズルいの 教会行こうよ
待ち人から奪われないように
祈ったのに
待ち人から奪われないように祈っていた
待ち人とは運命の先に待っている相手という意味
主人公は誰かから奪われるような不安定さをずっと感じていて、神に祈るほどだった
神というワードもこの後にでてきます。
バイバイ熱恋よバイバイ熱恋よ 最果てまで一気に嵩む
たゆたうこなく 一気にバイバイ ためらうことなき恋傀儡
少しだけ泣いた
ここで川谷さんの造語があらわれますね。
まず熱恋という言葉、熱愛ではなく、熱恋になる
恋と愛の違いとは色々意見がありますが、愛は永遠なるもの で 恋は一時的なもの
これだけ熱烈でも一時的なものに過ぎなかった儚さ。
そして恋傀儡、「あなた」にためらう(迷う)こともなく恋の傀儡にされ、ためらうことなく恋の傀儡となった自分。
その容赦のなさと愚かさへの怒り。
最果てまで悲しく虚しい気持ちで嵩むなか、少しだけしか泣かない、泣けない。
彼女の気持ちを何かが押さえつけている状態だと察します。
周回する恋の季節風とあなた一緒に吹いて消えてった
何も言えずのままが 美しいってそればかり思っていた春
そして、季節が移ろうことが必然であるのと同じように、恋は移ろいで、「あなた」は消えていった、とても儚い恋愛観
そこまできても、どこか潔いまま終わろうとした自分がいた。
何も言わずに終わらせて、それが一番美しい形だと、信じたかった。
「思っていた」と過去形なので、きっとその後に、別に美しくもなんともなかったのだと、気づくのでしょう、それがここからの歌詞になります。
そして2番へ
どうなったらいいとか こうなったら幸せだとか
神頼みに近い色した、過去の感情
後悔にしかすがりつけないのはきっと 神様が決めたんだろう。
必然的な別れが待ち構えてることを感じながら、違う未来を神頼みのように描いていた愚かな自分を思い出す
そうやって後悔にしかすがりつけないのは、神頼みをした自分に与えられた罰なのかと、自分と運命を呪い始めます。
春が嫌いです、こんなんじゃもっと冬に甘えたツケを払わなきゃだ 最低
そして、春が嫌いになってしまう、春が暖かい季節なことも含めてとても皮肉な心境
それでも、いまだに冬にいろんなことから目を背けたツケを払わなきゃいけない。
「最低」とは果たして「あなた」を責めているのか「自分」を責めているのか・・・
またサビに入り(歌詞同文)Cメロへ
気高いあのハルの言う通り 苦しくなった四月の夜
手紙みたいな感情のダダ漏れが
落ちて流れて争って 結果なんか寂しくなった
美は仇となり 溢れかえった
「気高いあのハルの言う通り」ハルという人物は詳細に語られていませんが、どこかでずっと歪さを感じていたもう1人の主人公なのかなと思います。
結局もう1人の自分の予感するまま、苦しい四月を迎えた。
箱に詰められた手紙のように、自分の気持ちが心の中に詰まっていた。
いまだに溢れかえらないように抑え付けていたけど、そうやって争っているうちに
寂しくなってきてしまった。
そうやって「美しさ」という箱の中に気持ちを抑えきれなくなった時
「あなた」と「自分」への恨み(仇)となり今更、溢れかえってしまった。
一生最愛さ一生最愛さ だから記憶の隅に置いといて
何も言わずのままが詞になって
結局傷つけると思うのは勘違いなの?
私はまだあなたのことを愛している。これからも一生
だから忘れないでほしい、少しぐらい後ろ髪引かれていてほしい。
何も言えない気持ちはもう書き出すしかなかった。
最後に残った詞を見て、その気持ちを押さえつけようとした自分を思い返して
最後に問いかけた
「あなたを傷つけると思っていたのは勘違いだった?」
答えはもう帰ってこない。
まとめ
ハルの言う通り
ハルというのはきっと”理性的な自分”で
恋傀儡となっていた”盲目的な自分”とずっと対立していたのでしょう。
MVでは2人の女性が現れますが、きっと春の別れを経て、悲しくなった時に”理性的な自分”に戻れたけれども、まだ”盲目的な自分”が自分を操ろうとしている
それを振り切ろうとする葛藤を表現してるのかなと思いました。
別れ際すら恋の傀儡であった自分はどこかで醜さを嫌って
自分の気持ちをぶつけるようなことは最後までできなかった。
歪さを無視し続けたこと、そして最後の些細な遠慮が、大きなツケとなって帰ってきた。
暖かで穏やかな春に、全てが終わってしまう皮肉さと
描く未来と擦り合わない、運命の呆気なさなどが、ひっきりなしになる淡々としながらも激しいサウンドともに、楽曲を通して表現されています。
きっと、どんな恋にも、こういった皮肉な2面性はあって
この歌を聴くと恋愛と皮肉さはいつまでも切って離せない関係なんだなと思います。
最後まで見てくれてありがとうございます。
説明も少し複雑になったような感じがあり伝わったでしょうか・・
この曲は整然とした美しさと複雑な激しさを帯びていて、川谷絵音の飲み込むようなファルセットもさることながら、バンドの力強さを全面に出した、indigo la endの可能性を示した一曲だなと思います。
昔のindigo la endも好きですが、スタンダードさにもっと繊細さが加わってきた最近のindigo la endのサウンドや歌詞はとても自分好みです。
これからの曲が本当に楽しみですね。